【愛玩動物飼養管理士監修】すべては猫のために!あなたにもできる「猫の活動」あれこれ

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松尾 猛之(ねこライフ手帳製作委員会委員長/愛玩動物飼養管理士1級)

ペット用品メーカー勤務を経て、母子手帳からエンディングノートまで、愛猫との生活記録をオールインワンで記入できる「ねこライフ手帳ベーシック」を2019年に製作しました。手帳の販売を通して、飼い主である人間が愛猫の個性と向き合い、理想の暮らし方を自分で考えることの大切さをお伝えしています。

ねこライフ手帳製作委員会の松尾です。今回もよろしくお願いいたします。

 

飼い主は愛猫のために奉仕することが義務となりますが、世の中には家庭に居る愛猫だけでなく、飼い主のいない猫のため、猫と一緒に暮らす人間のため、さらには猫が好きだという人たちのために活動している方もたくさんおられます。

 

「不幸な猫を減らしたい」「猫のために力を尽くしたい」「猫が好きな人たちに向けたモノづくりをしたい」など、個人や団体、営利や非営利を問わずそれぞれの思いで、人間と猫が一緒に暮らす社会に貢献されているのです。

 

今回は「猫に関係するいろんな仕事や活動」についてご紹介しましょう。

 

ジャンルによってはあまり広く知られていない現場もありますが、より良い猫との暮らしを考えながら日々活動が行われている現場を知ることで、猫との関わり方にもいろんな形があることを分かっていただけるかと思います。

大変な現場も多い命のレスキュー「猫の保護活動」

2020年度に保護された「飼い主が不明の猫」は約3万4000頭。

この中には人間による意図的な飼育放棄、多頭飼育崩壊による個体も含まれます。

 

一歩外に出てしまえば事故に遭う危険が大きくなる中、命を救うためにさまざまな現場で動いておられるのが保護活動に関わるスタッフ、ボランティアの皆さんです。

 

猫を見つけて保護するまでの間にはいろんな状況が想定されます。個体によっては捕獲器を設置して粘り強く待つことも少なくありません。

また生まれて間もない仔猫を保護した場合には、数時間おきの授乳も必要に。ミルクボランティアの皆さんによる献身的なお世話によって、小さな命がつながれていきます。

 

自治体や動物病院と連携しながら段階を踏んで進めていく作業には経験やノウハウも求められますが、中にはせっかく助けた猫がケガや衰弱によって力尽きてしまう現実も。猫の保護活動は命の尊さを肌で感じる現場といえます。

 

昼夜を問わずご尽力されている方々には本当に頭が下がりますが、命を救い、つなぐという役割には大きなやりがいを感じるという声も聞かれます。猫の保護活動に関しては登録ボランティア制度を導入している自治体も増えていますので、ぜひホームページで調べてみてください。

保護された猫の幸せを守る「地域猫活動」と「譲渡活動」

保護された猫たちの多くは地域猫として見守られる「TNR」、あるいは家庭への譲渡を前提に育てながら飼い主を見つける「TNTA」、このいずれかの方法によって人間と共に生きる日々を過ごします。

 

TNRで必要となるのは地域ボランティアによる継続的なお世話ですが、外猫にごはんをあげるだけが地域猫活動ではありません。

 

この理解を地域全体でどこまで共有できるかという難しいテーマを抱えながらの活動となりますが、行政とも連携しながら避妊、去勢を済ませた地域猫たちにとっての幸せや快適さとは何かを考え、見守っていく現場であるともいえます。

 

TNTAについても避妊、去勢を経て譲渡までの一時的な預かり、保護団体や自治体などが主催する譲渡会の告知や実施、譲渡を希望する人からの相談やアドバイスの対応、譲渡可能な世帯かどうかの判断、トライアル、本譲渡・・・と、家庭に譲渡されるまでには多くのプロセスや人の手が必要となってきます。

 

猫の飼育に適さない世帯への譲渡は、再び飼い主のいない猫を増やしてしまうことにもつながりかねません。猫と暮らしたい人なら誰でもOKというわけではなく、完全室内飼育ができる居住環境かどうかの見きわめをしっかり行うことも譲渡会スタッフの大切な仕事となるのです。

 

猫の譲渡会は全国各地で行われています。あなたがお住まいの地域や近隣にもボランティアを募集している保護団体があるかもしれません。

愛猫のお世話、引き受けます!「キャットシッター」

犬の場合には一緒に旅行へ出掛けることも可能ですが、猫は室内飼育が原則となるので長期間家を空けることができません。そこで頼りになるのが、ペットシッターの中でも猫のお世話を専門に引き受けてくれる「キャットシッター」です。

 

給餌、水の交換、トイレ掃除、そして愛猫と遊ぶこともキャットシッターの役割。

事前に自宅を訪れ、愛猫の性格や食事量、持病の有無、普段の居場所、よく遊ぶおもちゃなど、飼い主から十分なヒアリングを行った上で当日のシッティングとなる流れが一般的となります。

 

留守の間にごはんやトイレのお世話をしてくれるシッターさんがいるおかげで、猫と暮らす人でも長期間の旅行や帰省に出掛けることができます。また急な外出が必要となった時や単身世帯にとっても頼れる存在となるのは間違いありません。

 

個人で開業されるケースも多いのが特徴で、別のお仕事などと並行してシッティングをされている方も多くおられます。シッティングが可能な日や時間、サービスの内容や料金もそれぞれ異なりますので、利用にあたっては事前に条件を詳しく確認しておくことをおすすめします。

 

※ペットシッターの開業には第一種動物取扱業(保管)の資格要件ならびに登録が必要です。

多彩なイベントや譲渡会の開催も「猫カフェ」

かつては猫と一緒に過ごす空間を提供することがメインだった猫カフェも、運営形態の幅が広がったことでサービスの中身も多様化してきました。

 

現在では屋外で保護された猫たちが店内に住む形となり、希望する人に譲渡を行う「保護猫カフェ」も増えています。保護猫カフェの多くは保護団体が経営しており、条件確認やトライアルなど、通常の譲渡会と同じ流れを経て譲渡が行われます。

 

店内での触れ合いを通して猫たちは人間に対する警戒心が薄れ、来店客も迎え入れたい猫をじっくり検討できる、お互いにとってメリットが大きいマッチングの形といえるでしょう。

 

他にも愛猫家が集まるイベントやセミナーの開催、さらには飲み物だけでなく本格的な料理の提供など、それぞれ趣向を凝らした運営のスタイルが見られるようです。

新型コロナウイルスの影響もあって、各店舗では衛生管理を徹底しながら営業が行われています。利用者もルールやマナーをしっかりと守って、猫との有意義な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

全国各地でイベント開催中!「猫作家」

モノづくりの世界にも「猫作家」と呼ばれる多くの愛好者がおられます。

 

雑貨、アクセサリー、ぬいぐるみ、日用品、お菓子など、猫をモチーフにしたアイテムをデザインし、製作する猫作家。おもちゃや首輪などの猫用品も含まれており、ハンドメイドの割合が大きいのが特徴です。またオーダーメードの商品を作ったり猫のイラストを即興で描いたりなど、それぞれの得意なスキルを生かしたクリエイティブな世界が展開されています。

 

作品はインターネット通販や猫関連アイテムのブースが集まるイベントやマルシェなどで購入できます。

「ニャンフェス」「にゃんだらけ」といった大規模な猫イベントは毎回多くの来場客で賑わっていますが、近年は各地で同様のイベント開催も多くなっており、猫作家たちが手掛けた作品を直接目にできる機会も今後増えていくかもしれません。

 

収益の一部を保護猫のチャリティーに充てている方や、保護活動と並行して創作されている方も多く、出来上がった作品の中にも猫に対する愛がたっぷり感じることができます。

「とにかく猫が好きだから」現場はそれぞれ違っても、思いは同じ。

不幸な猫を減らしたい、猫と暮らす飼い主の日常をサポートしたい、猫の魅力を多くの人に知ってもらいたい・・・本業、ライフワーク、趣味などそれぞれの関わり方で、多くの人たちが猫に関係した活動を行っています。

 

猫という生き物がいろんな形で人間社会に溶け込んでいる中、より良い共生を目指すためには

持っているスキルや立場はそれぞれ違いますが、「猫のため」そして「猫を愛する人たちのため」という思いは皆、変わりません。

 

あなたがお住まいの地域でも、猫に関する活動やイベントが行われているかと思います。

仕事や家事の合間に参加されている方も大勢おられますので、興味や関心のある方はご自身でもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。