「愛犬との暮らしをきっかけに犬の栄養学をたくさん学び実践してきました。
私が作ったごはんを愛犬が喜んで食べてくれる様子を見るのが何より幸せ。
愛犬の心と体を健康にするごはんを多くの人に伝えていきたいと思っています。」
筆者である私は昨年に念願の子犬との生活がスタートしました。2年前に先代犬を見送った当時はまた子犬を迎えることなんて、考えていなかったのに、ご縁とは不思議なものです。
先代犬と同じ犬種(イタリアングレーハウンド)ですが、当然ながら個性がありいろんな面での違いを感じます。
特にとまどったのは子犬の偏食。それまでなんでも喜んで食べていたのに突然食べなくなったのです。成長期なのに痩せさせてはならないと思い、いろいろ工夫しました。一般的なセオリーの方法と違い、私が望む方法で対処したので少々時間がかかりました。
今回はペットフーディスト山本が生後2か月から生後半年までに起きた子犬の食事の変化をご紹介します。子犬との生活の一例として読んでいただけると嬉しいです。
お迎え時期(生後2か月)
我が家は子犬が生後70日ごろにお迎えにいきました。理想は生後3か月くらいまで母犬のそばで育ててもらった方が良いと思いますが、子犬の成長は早いので可能な限り早く一緒に暮らしていろんなことを(お互いに)経験したいという欲張りな気持ちが勝ってしまいました。
実際、生後2か月の子犬は何をしても可愛くて、毎朝体が大きくなっていることに驚くほど成長が早いですね。子犬の名前はアットと名付けました。
先代犬を迎えた当初はしつけやトレーニングに興味があったため少し厳しくし過ぎましたので、アットには緩く甘く育てるつもりでした。とはいえ当たり前ですが子犬のエネルギッシュな行動に翻弄されて私は毎日へとへと。
一番のストレスはトイレの失敗です。アットはすぐにトイレを覚えてくれたものの、テンションがあがっているときなどに失敗しましたし、すぐに処理をしないとうんちを食べてしまうので気が抜けませんでした。
それなりに大変な日々でしたが、食事に関しては全く何も心配事がなかったのはとても助かりました。
我が家に迎えてしばらくの間は元々与えられていたドッグフードと同じものを食べさせました。理由は、できるだけ体に与えるストレスを最小限にするためです。
ドッグフードを変えることはお腹の中の環境を変えてしまうので少なからずストレスを与えることになります。子犬が新しい家の生活に慣れるまでは食べなれた食事を続けることが良いでしょう。
いつもすごい勢いでバリバリとよく噛んで完食し、良いうんちが出ました。
生後2か月~3か月ごろの子犬の食事
子犬の成長がもっとも著しいのが生後2か月から4か月の間と言われている通り、アットの食べる量もどんどん多くなりました。与えれば与えるだけ食べるという感じだったので、フードメーカーの給与量は確認せずに、体の大きさや肉付き、うんちの量や状態を観察しながら給与量を適当に増やしていったのです。
この時期は、成犬の時とくらべてふっくらコロコロと太って丸みのある体つき。痩せないように気をつけました。
■子犬に必要なカロリー
この時期の子犬には、体重当たり成犬の2~3倍量のドッグフードを与えます。それだけ成長のためにエネルギー(カロリー)が必要だからです。
アットも生後4か月時(食事量のピーク時)は500kcal分食べていました。成犬(避妊・去勢済)の必要カロリーのおよそ倍です。
先代犬のときよりもアットは起きている間中走りまわっている感じで運動量が多く、それだけに食欲旺盛で良く食べているという印象でした。
それでは成犬時の3倍量のカロリー摂取が必要な子犬とは、どんな生活なのでしょう。おそらく広大な土地を走り回っているとか運動量は半端なく多いケースなのだと思います。
海外製品のドッグフードのカロリーが国産のものより高め(タンパク質と脂質がたっぷり)なのは、それだけ生活の違いが大きいからですね。
■子犬に欠かせない栄養素
成長のために欠かせない栄養素のひとつはアルギニン。肉や魚に含まれています。やはり犬には動物性のタンパク源は不可欠なのです。
ドッグフードをきちんと食べていれば不足することはありませんが、特別なトレーニングのご褒美などに茹でたささみを与えるのは消化にも負担がなく嗜好性も比較的高いのでおすすめです。アットも喜んで食べたのでお散歩デビューの時には持っていきました。
ただし、栄養素はバランスが必要で、肉だけをたくさん摂るとカルシウムとの比率(リンとカルシウム)が悪くなるなど心配な面もでてきます。良いものだからといって過剰に与えないように注意も必要です。
生後4か月の子犬に訪れた変化
■恐怖期と偏食期
食べる量がピークに達して間もなく、急に食べ渋りが出てきました。それまでは、ドッグフード以外の食べ物も与えれば何でも食べていたのに、あまりに大きな変化でとまどいました。
ちょうど乳歯が抜け落ち生え変わりの時期でしたのでおそらく抜けた歯茎にフードが入り込んで痛かった、などがきっかけなのだと思います。
ものすごく食に関して神経質になり、初めて食べるものは用心深くなりましたし、これまで喜んで食べていたものも食べなくなったのです。
このころ、お散歩トレーニングでも「恐怖期」と呼ばれるような行動がみられました。以前よりも外の音や変化に敏感に反応して前に進まなくなる行動が見られました。
恐怖期は成長過程で訪れる場合があるもの、ほかにも生後半年くらいに反抗期とか先祖返りとか呼ぼれるものもありますね。それまでできていたことができなくなる(飼い主の指示を無視する)など、一時的な変化のことです。
アットが食べなくなったのは、いろんな理由が絡んでいます。その中には私への挑戦(どれだけ甘やかしてくれるか)もあったでしょう。
■おならの匂いが意味すること
いま思うと、食べる量がピークに達していたころはおならの匂いがとても臭かったのです。おならが臭いということは腸内環境が悪化している状態。必要以上に食べているということです。そろそろ成長期のピークは過ぎたよ、この子には食べる量が過剰になってますよ、というサインだったのです。
食べ渋りの偏食期の訪れで、一時的に体重が減ったときは心配でしたが、結果的には食事量の調整や内容を見直す機会を得ました。
生後6か月の子犬の食事
小型犬であれば生後8か月ごろには成犬用のフードに切り替えます。そろそろ成長が落ちついてくるからです。生後4か月までは成犬の2倍、生後4か月以降は徐々に量を減らす時期。
アットは食べ渋りが激しく食べる量がいきなり減ったので体重が少しずつ減りました。
これまで食べてきたドライフードをふやかしたり、ウェットフードを混ぜたりしても食べません。目新しいものをいろいろ試しましたがまともに食べるものがなくて心配を通り超して本当に腹が立ったときもあります(笑)
何とか体重が減らないように工夫をするうちにアットが食べてくれるものがだいたいつかめてきました。大好きなバター(無塩)も使いましたし、肉だけでなく消化に良い炭水化物を与えたくて白米、米粉の蒸しパン、クッキーなど好んで食べるものをとにかくプラスしました。
アットの場合はテンションがあがり体をよく動かした後は食欲がわいたようです。家の中で与えても食べないフードも散歩の途中からはよく食べました。
そのため散歩にはカロリーが高めで嗜好性の高いジャーキー状のフードを持っていき、出来るだけ食べさせるようにしたので、少しずつ体重が戻ってきました。
もうすぐ生後7か月になる現在は、1日の食事の2/3は手作り食。残りの1/3はドッグフードです。食べること自体は好きですが、そのときに食べたくないものであれば食べない。遊びの方が優先なのは変わってません。
嫌がって食べなかったものも遊んでお腹が空くと食べる場合があります。何でも喜んで食べていた先代犬との大きな違いです。
さいごに
今回の私の方法は甘やかしすぎと言われるかもしれません。本来なら与えられたものを食べない場合、皿を下げて次の食事の時間まで与えないという方法が良いでしょう。与えられたときに食べないとお腹が空いても食べるものがないという危機感を持ってもらうためです。
私自身は食べることが何より好きなので、お腹を異常に空かした状態や嫌なものを無理に食べるようなことが嫌いだったので少々遠回りをしましたがアットと私にとっては苦手なストレスの少ないやり方だったと思います。
犬は私たち同様に豊かな精神活動をする動物ですね。それだけに喜びや楽しさだけでなく、いろんな心配ごとや失敗など我々も気分が落ち込んだり、疲れてしまったり。それは当然だと思います。そういうさまざまな感情を味わうことそのものが人生の豊かさにつながっているのではないでしょうか。
みなさまの愛犬との暮らしではどんな経験をされているでしょうか。それぞれの個性に合った方法で笑顔の多い毎日が過ごせますように。