【愛玩動物飼養管理士監修】必ず起こる「まさか」のために・・・自分で考え、備えるペット防災のススメ

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松尾 猛之(ねこライフ手帳製作委員会委員長/愛玩動物飼養管理士1級)

ペット用品メーカー勤務を経て、母子手帳からエンディングノートまで、愛猫との生活記録をオールインワンで記入できる「ねこライフ手帳ベーシック」を2019年に製作しました。手帳の販売を通して、飼い主である人間が愛猫の個性と向き合い、理想の暮らし方を自分で考えることの大切さをお伝えしています。

 

ねこライフ手帳製作委員会の松尾です。今回もよろしくお願いいたします。

 

3月11日は東日本大震災の発生日。

多くの命が奪われ、飼い主を失った動物たちが路頭に迷いました。

 

3.11という特別な日だけでなく、防災を「日常」として捉えることが求められる時代。災害は地震や津波だけでなく台風、大雨、竜巻、大雪、火山噴火など多種あります。

 

地域単位でも意識が高まっているペット防災の問題。しかし「本番」はいつやってくるか分からず、就寝中など不意に襲われるケースもあるでしょう。災害ゆえの難しい局面も出てくるだけに、それぞれの家庭環境に見合った備えは非常に大事です。

 

今回のテーマは自発的に取り組むペット防災の大切さについて。

受け身ではなく自ら考え、備えていく姿勢があなたと愛犬、愛猫の命や生活を守ります。

まずは自分と家族の身を守る・・・防災の最重要項目は「自助」

自分で備える「自助」

ご近所どうしや地域で助け合う「共助」

行政から支援を受ける「公助」

 

防災には3つの「助」があります。

 

災害が起こってすぐの時間は周りに頼れる余裕などありません。よって防災の基本は「自助」となり、飼い主自身が愛犬、愛猫の安全を守るための行動から始まります。

 

台風や大雨なら前もって準備する時間もありますが、地震の場合には常日頃の備えで対応することが第一。よく言われる「72時間(3日)」は自治体や自衛隊からの支援、つまり「公助」が来る目安とされている数字ですが、この72時間を「自助」でしのぐための備蓄が欠かせません。

 

こちらのコラムにも書きましたが、軟水のミネラルウォーターは人間とペットの共用に適しています。また冷凍庫の氷をしっかりストックしておくことも有効でしょう。

覚えておきたい「同行避難」と「同伴避難」の違い

自宅から逃げる想定において必要なのは、ペットと一緒の「同行避難」を受け入れてくれる避難所の事前確認です。

 

ここでしっかりと理解しておきたいのは「同行避難」と「同伴避難」の違い。衛生面ならびに不特定多数の人たちがいることへの配慮を思うと、避難所への「同行」はできても同じスペースで過ごす「同伴」はまず望めません。公共の避難所でペットの受け入れ可とする場合でも、原則として人間とペットは別々の場所で過ごすことになります。

 

もちろんペットがいるスペースにはスタッフやボランティアが常駐します。しかし非常時ゆえに動物たちがどんな環境に置かれるかは、その時にならないと分かりません。

 

自治体の中には「避難所での生活は人間優先」とあらかじめ定めているケースもあります。ペットとの同行避難ができても、環境の変化で大きなストレスを掛けてしまうかもしれないリスクをどう考えるか。事前の情報収集と熟慮が必要な項目です。

モノの備えは大事。使い方の工夫もまた大事。

私の独断による見解ですが、キャンプなどのアウトドアを趣味に持つ人は災害時に強みを発揮するでしょう。自宅を離れても自力で寝食できるノウハウを持っていること、そしてキャンピングカーやテント、ハンモック、固形燃料、調理器具など、防災グッズとして応用できるアイテムを揃えていることのメリットは大きいと感じるからです。

 

防災のためにアウトドアグッズを揃えるのは大変ですが、家の中にあるモノをうまく活用する工夫は大事です。ペット用のウェットティッシュは食器洗いにも使えるので水の使用軽減につながります。また新聞紙もトイレシーツに活用できるので一定のストックが欠かせません。

 

また断水時には、猫のトイレ砂を人間が使用する簡易トイレに使う手もあります。しっかり固まる上に素材によっては消臭効果もあるので衛生面でも有効です。こうしたアイデアを友人知人との情報交換による「共助」で得ておけば、いざという時にとても役立ちます。

愛犬や愛猫とのコミュニケーションは非常時にこそ試される

ペットと暮らす家庭においては、避難所へ向かうことを困難と捉えて「在宅避難」を軸とした防災対策を考える状況も出てくるかと思います。

 

生活環境が大きく変わらないのは良いですが、愛犬、愛猫も普段と違う空気を感じ取り、飼い主と同じような不安の中にあるという理解は持っておかねばなりません。

 

ストレスによる食欲不振や夜中の鳴き声など、いつもと違う様子が見られることもあります。年齢や持病の有無、季節によっては健康面の配慮が難しくなる状況も想定すべきです。

 

共に寄り添い、気持ちを共有し合うことが「心の安定」につながる。

このように考えれば、日頃のコミュニケーションで信頼を築いておくことの大切さが分かるのではないでしょうか。

 

不安がいっぱいの中で思うのは、お互いにとって「癒し」の存在となれる意味の大きさ。

これもまた心のケアという面で継続的なペット防災に含まれると考えましょう。

想定外に備えるコツは「とことんネガティブ」に考えること

ペットとの暮らしを有意義なものにするために必要なのは、正解を見つけることではなく「選択肢をいかに増やすか」だと私は思っています。

 

防災においても根本は同じ。「この状況に置かれたらどうする?」に対する選択肢は多ければ多いほど、想定外の出来事にも柔軟に臨める可能性は大きくなるでしょう。

 

ではペット防災の選択肢をどうやって増やせばいいのか。

手がかりとなるのは、とことんネガティブに、とことんマイナス思考でシミュレーションを広げていく方法です。

 

地震や津波であれば「もし真夜中だったら、もし寒い冬や猛暑日だったら」など、来てほしくない状況から「どうする」の思考をスタートさせてみましょう。そこから新たな発想が生まれ、備えるべき項目が増えれば、いろんな想定外を「想定の中」に引き込むことができます。

 

通信障害が起きてしまえば情報が入手できず、外部との連絡も取れなくなります。東日本大震災は発生が平日の午後となり、多くの人が自宅を離れていました。帰宅するまでの間、残されているペットに日頃からどんな備えができるか。家族間での取り決めや役割分担などを可能な限り事前に決めておけば、先の見えない不安を少しでも取り除くことができそうです。

 

 

動物たちは飼い主のお世話がなければ生きていけません。飼い主である人間は自分の身を守り、ペットの命を守る責任も担うことになります。

 

何より大事なのはマニュアルの鵜呑みではなく、あなたの家庭に見合った防災対策に落とし込むこと。今からできること、備えられることを自発的に考えて「後悔しないペット防災」を作り上げていきましょう。