【獣医師監修】シニア期にどう備えるか

小堀 幸美(獣医師、ペット家族動物病院成城店 院長)

シニア期の準備は早めに行い、快適に過ごせるようにしてあげましょう!

 

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シニア期に入る前に準備を

ワンちゃん、ネコちゃんのシニア期はいつからかご存知ですか?

一般的に、小型犬・中型犬や猫のシニア期は7歳から、大型犬のシニア期は5~6歳からと言われています。近年では犬猫の寿命は18~20歳ころまで伸びているため、シニア期は長く続くことになります。

加齢に伴いシニア期の中でも徐々にステージが変わっていき、身体の変化も目に見えるようになります。高齢になるにつれて食べるのが難しくなったり、排泄も思うようにいかなくなったりすることも。それぞれのステージに合った食事を選ぶことや、生活環境を整えてあげることが重要です。

シニア初期は見た目も元気さも以前と変わらないため、「まだ大丈夫」と感じるかもしれませんが、身体の中では確実に変化が起こっています。ワンちゃん、ネコちゃんが長く健康に生きられるよう、準備を早めにしておきましょう。

身体の変化をチェック

ワンちゃん、ネコちゃんは身体に異変が起きてもそれを伝えることが出来ません。そばにいるご家族がサインに気づいてあげることが重要です。以下のポイントをチェックしてみてください。

 

①関節の変化

段差や階段の上り下りをためらう、ゆっくりとしたスピードになる、以前は上がっていた場所に行かなくなるなどの変化があった場合、関節は曲がりづらくなり、関節炎で痛みがでている可能性があります。早めに病院に行きましょう。

お家での対策も重要です。段差の上り下りは関節に負荷がかかるので、スロープを設置してあげましょう。気づいたときは抱き上げてください。また、足を滑らせると関節に大きな負荷がかかるので、床に滑り止めを付けてあげるとよいでしょう。

関節を形成する成分であるコンドロイチンやグルコサミンなどが入ったサプリメントやごはんを、シニアになる前から与えてあげるのがお勧めです。特にネコちゃんは元々上下運動をする生き物なので、シニアの前から関節用サプリメントを摂取するとよいでしょう。サプリメントなどに敏感なネコちゃんはサプリメント入りのごはんにしてあげるのもお勧めです。

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②眼の変化

物にぶつかりやすくなる、触るとびっくりする、よく眩しそうにするなどの傾向がある場合、眼が見えづらくなっているかもしれません。頻繁に部屋の模様替えをすると戸惑ったり、物にぶつかったりするので、なるべく避けましょう。

変化が出る前にアントシアニンなど抗酸化成分が入ったサプリメントを与えてあげるのもお勧めです。

③行動の変化

トイレを失敗するようになる、ウロウロするようになる、狭い隙間に入って出られなくなる、夜泣きをするなどの行動があったら、認知症の疑いがあります。 事故が起こらないように家具の角に緩衝材を付けたり、高所から落下しないようにバリケードを作ったりして、環境を整備してあげましょう。

一般的に柴犬は認知症になりやすい犬種といわれていますが、最近では高寿命化により様々な犬種・猫種で認知症が出ています。ホスファチジルセリンやGABA、EPA、DHAが入ったサプリメントを与えると、発症を遅らせる可能性があります。

④口の変化

口臭がキツくなったり、以前より物を食べづらそうにしていたりしたら、歯周病かもしれません。歯周病になると、歯周ポケット(歯と歯茎の間)から細菌が血管に侵入しやすくなります。それが心臓、腎臓、肝臓、肺などに運ばれて内臓疾患や炎症を引き起こす可能性があるため、歯周は万病の元といわれているのです。

対策としてはまずは歯石が付かないようにすることが重要です。歯垢が付くと3日で歯石に変わると言われているので、日常的に歯ブラシなどでケアをしてあげましょう。

⑤毛なみの変化

毛なみは栄養状態や脱水状態、ホルモンバランスを反映しています。毛がパサパサしていたら、身体が脱水状態になっていたり、しっかり栄養が吸収できていなかったりしている可能性があります。

また、ネコちゃんは体調が悪い時や関節が痛い時には、毛繕いを行わなくなる傾向があります。毛束が増えたり、べたべたと脂っぽくなっていたりしたら、体調不良のサインかもしれません。

早めに動物病院へ相談しましょう。

⑥飲水量・尿量の変化

水を飲む量と尿量は、体の中の変化を表す優秀なバロメーターです。特に1日に摂取する水分量はしっかり把握しておくと良いでしょう。容器に入れる水の量を決めておけば、交換する際に残っている水の量から、おおよその飲水量がわかります。

尿量を計量するのは難しいですが、回数はしっかり把握しましょう。回数が増えていれば、頻尿もしくは尿量自体が増えているということで、どちらも要注意です。

⑦食事量・好みの変化

食事量が減って痩せてきた。あるいは食事量が減ったのに太ってきた。以前は何でもよく食べていたのに急に選り好みするようになった。こうした変化は、どれも病気のサインである可能性があります。動物病院に相談しましょう。

病気だった場合はいわゆる療養食が必要ですが、特に食事に制限がない場合は、消化しやすく、高タンパクで低脂肪のものを選ぶとよいでしょう。また、抗酸化成分の入ったフードを取り入れることや、ガラクトオリゴ糖や乳酸菌の入ったフードで「腸活」を行うことが、身体の老化を遅らせることにつながります。

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ひと口にシニア期といっても、7歳ごろの初期から段階的にステージが変化します。加齢に伴う身体の変化に合わせて、関節や腎臓、免疫などのサプリメントを検討しましょう。

また、ワンちゃん、ネコちゃんは加齢するにつれて、自分が脱水していることに気づきにくくなる点にも要注意です。ウェットフードを取り入れるなどして、意識しなくても水分をしっかり摂って脱水させない工夫も必要です。

健康診断

ワンちゃん、ネコちゃんの生きる早さは、人間の約6倍といわれています。シニア期に入ると一気に老化が進むこともあるので、年に2回は健康診断を受けるのがお勧めです。身体検査、尿検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを行えば、病気の早期発見にもつながります。

また、いざというときに備えて、かかりつけの病院の休診日にも開いている病院や、夜間救急に対応している病院などをリストアップしておくとよいでしょう。


まとめ

年齢を重ねると身体の変化は出てきます。日々注意して見ていきましょう。また、シニア期に入る前に、食事や生活環境の見直しを行いましょう。

何か気になることがあれば動物病院に相談を、特に症状がなくても定期的に健康診断を受けるようにしましょう。