【愛玩動物飼養管理士監修】いろんな気づきが得られる「愛猫観察」の習慣をつけよう

松尾 猛之(ねこライフ手帳製作委員会委員長/愛玩動物飼養管理士1級)

ペット用品メーカー勤務を経て、母子手帳からエンディングノートまで、愛猫との生活記録をオールインワンで記入できる「ねこライフ手帳ベーシック」を2019年に製作しました。手帳の販売を通して、飼い主である人間が愛猫の個性と向き合い、理想の暮らし方を自分で考えることの大切さをお伝えしています。

 

ねこライフ手帳製作委員会のホームページ

https://www.nekolifediary.com/

 

はじめまして。ねこライフ手帳製作委員会の松尾と申します。

 

愛猫の記録をつづり、日々の暮らしに役立てる「ねこライフ手帳」の製作・販売、愛猫とのより良い暮らし方を話し合う全員参加型セミナーの開催といった活動を行っています。

 

今回からペットプロジャパンさんの『PET JOURNAL』にて、コラムを連載させていただくことになりました。お読みになられた皆さんが、愛猫との生活をいろんな角度で、そして広い視野で考えていただけるきっかけになればと思っています。よろしくお願いいたします。

 

外部から情報を取り入れる時、忘れてはいけないこと

現在、国内の家庭で人間と暮らす猫の頭数は犬を大きく上回っており、新しく猫を迎え入れる家庭が年々増加しているという調査結果もあります。

 

日本では平安時代、あるいはそれ以前から猫を飼う歴史があったとされていますが、近年では新型コロナウィルスによる生活様式の変化も、猫を家庭に迎え入れる要因の1つとなっているようです。

 

動物と暮らすことの大変さ、難しさは、経験した人にしか分からないものです。

インターネットや書籍で数多く紹介されている、飼い方のマニュアルやアドバイスを参考にしたという方も多いでしょう。

 

愛猫との暮らしに役立ちそうな方法を取り入れ、実践していく意識はとても大切です。

しかし、忘れてはいけない点が1つあります。

 

それは「情報を発信している側に、あなたと暮らす愛猫の姿は見えていない」ということです。

 

 

「猫」と「あなたの愛猫」を同じだと考えてはいけない

食事やコミュニケーションの取り方、健康管理など、猫との暮らし方についての情報は、インターネットやSNSだけでも山のように流れてきます。

 

愛猫との生活で困りごとがある時や、何かしらのアドバイスが欲しい時、パソコンやスマホで検索したくなる気持ちはよく分かります。私も猫と暮らしはじめてすぐの頃は、愛猫に何かあればネット検索を繰り返す日々でした。

 

しかしいろんな情報を調べていく中で、私はある部分に違和感を覚えるようになります。

それは、一部で目にする「猫は○○○な生き物です」「猫は1日○時間寝ます」「猫は○○○が好きです」といった、猫という生き物をひとくくりに捉えるような言い回しです。

 

 

猫たちも「意思」を持って生きている

人間それぞれに個性があるのと同じく、猫にもいろんな性格や好き嫌いがあります。

体格も睡眠時間も食欲も個体によって違うので、やはり、ひとくくりにはできません。

 

シンプルに、逆の立場で考えてみましょう。

あくまで仮の話ですが、猫たちの世界に『人間との暮らし方マニュアル』があったとします。

 

もし、そこに、

 

「人間は昼間に働き、暗くなったら寝ます」

「人間はいろんな誘惑に弱く、お酒や甘いものが大好きです」

「でも人間が一番好きなのはお金です」

「お腹が空いたら人間の傍らで小さくニャーと鳴けば、ごはんが出てきます」

「総括すると人間は、意外と単純な生き物です」

 

といったことが書かれていたら、

 

「それは違う、勘違いするな」と異議を唱える人間は少なくないでしょう(私は「その通り」と受け入れますが)。

 

人間も猫も、自ら意思を持って行動する生き物です。

猫を迎え入れるとは、「命ある家族と一緒に暮らす」ことでもあります。

 

あなたにとって唯一無二の家族である愛猫との生活を、一般論のマニュアルに頼ってばかりでいいのだろうか。

誰がいつ決めたのかもよく分からない「猫とは?」の定義を軸に、ひたすら外部の知恵を借りて丸飲みする姿勢はいかがなものか。

 

愛猫にも意思があるのなら、その意思がどのようなものかを探り、見きわめるのが人間の役割ではないでしょうか。猫という生き物に対する勝手な思い込みや偏見は、時として愛猫とのコミュニケーションをマイナスに働かせるものとなりかねません。

 

 

観察による「基準づくり」で、変化に気づきやすくなる

「愛猫の気持ちを知りたい」という願望を、最も良い形で叶えてくれるのは、

一緒に暮らすあなたが、愛猫の様子をしっかり観察することだと私は思っています。

 

観察といえば大げさに聞こえますが、要は「あなたが自宅にいる時、愛猫の様子を眺める時間を増やしましょう」ということです。

 

歩き方、昼寝の姿勢、タワーへの飛び乗り方、ごはんの食べ方、水の飲み方、トイレの済ませ方……すべて、猫によってそれぞれの個性やこだわりがあるでしょう。

人間にはできない身体の使い方、動かし方に気づかされることが多く、観察を続けるうちに、愛猫に対する好奇心や探求心がどんどん膨らんでいく魅力もあります。

 

しかし、この愛猫観察に何よりの意義をもたらしてくれるのは、愛猫が日常を送る「基準」を知ることができる点です。

 

愛猫が何かおかしい、いつもと違うぞと気づくためには、普段の行動や様子を知り、愛猫の「基準」がどこにあるのかを、頭に入れておかねばなりません。

病院で獣医師に愛猫の様子を話す時にも「いつもは○○だけど、最近は○○なので心配です」と、基準との比較で説明することができますね。

 

 

 

終生飼養の責任を果たすために

「犬と違って、猫は放置でもいいから飼いやすい」といわれることもありますが、それはあくまで、犬ほどお世話に手を掛ける必要がないという、人間側の都合だけを切り取ったものに感じないでしょうか。

 

猫も生き物ですから、体調を崩すことや、ストレスを溜めてしまうこともあります。

でも、その兆候に誰よりも早く気づくことができるのは、一緒に暮らす家族の特権だとプラスに考えればいいのです。

 

時には巷の情報やマニュアルに頼りたくなる気持ちも分かります。

でも、愛猫との暮らしに不明な点や疑問を持った時、インターネットの画面より先に目を向けるべきなのは、一緒に暮らす愛猫の姿ではないかと、私は思います。

 

 

愛猫を最期まで看取る「終生飼養」は法律で義務化されており、違反すれば犯罪となります。

動物を家族に迎え入れることは、人間の側に重大かつ長期的な社会的責任が生じることも意味しているのです。

 

社会的責任と言われても……という方もいらっしゃるでしょう。

でも、献身的な愛情とコミュニケーションさえ忘れなければ、必ずその責任を果たすことができるはずです。

 

愛猫観察の習慣をきっかけに、世間でいわれる「猫とは?」の固定観念を、あなただけの「愛猫とは?」に変えてみてはいかがでしょうか。