【ペット栄養管理士監修】愛犬の免疫力維持のために食事でできること

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山本由能(ペットフーディスト、ペット栄養管理士、犬の食事療法上級インストラクター師範)

「愛犬との暮らしをきっかけに犬の栄養学をたくさん学び実践してきました。
私が作ったごはんを愛犬が喜んで食べてくれる様子を見るのが何より幸せ。
愛犬の心と体を健康にするごはんを多くの人に伝えていきたいと思っています。」

 

 

愛犬との暮らしに欠かせないことのひとつは健康管理。

特に春は予防接種の季節でもあり、免疫力のことが話題にあがったりします。ワクチンを打ち体の中でしっかり抗体を作るには免疫機能が正常に働いていることが大事だからですね。

 

今回は免疫の仕組みや愛犬の免疫力維持に役立つ食事の工夫についてペットフーディストの山本が説明します。

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免疫の仕組み

免疫とは、体の外からの細菌やウィルスなどの侵入や、体内ではがん細胞の発生から体を守るために働く仕組み。

体には免疫細胞という防衛部隊がいます。常に体中をパトロールしていて異物と認識される菌やウィルスの侵入や発生したがん細胞を見つけたらその情報を伝達する係、情報をもらって異物を攻撃する係などそれぞれ役割を持った免疫細胞がいます。

 

上のイメージ図は、左は免疫力が低く異物が増殖し体が弱っています。右は免疫力が充分にあり異物に負けない体を示しています。

 

たとえば予防接種のワクチンもこの働きを利用したものです。あらかじめ感染すると脅威になる菌やウィルスを毒性の低い状態にして体の中に入れることで、実際に感染した際にすぐに攻撃できるよう準備を整えておけるようにします。感染しても軽症、もしくは症状がでないうちに菌やウィルスを排除できるようになるのです。

 

ですが、そもそも免疫力が低下している体ではワクチンを打ってもうまく働かない状態になります。菌やウィルスに対する抗体が充分にできない状態です。予防接種を受ける際は、愛犬の健康状態が良い状態のときであることはもちろん、ストレスケアを意識してあげましょう。

 

愛犬の免疫力を低下させる原因

愛犬の免疫力を低下させてしまう原因はいくつかあります。

 

●栄養不足

●ストレス

●病気

●加齢

 

免疫力が低下している状態ということはそのまま健康レベルが落ちているということですね。私たちの場合、疲れがたまっているときや加齢によって風邪をひきやすくなりますが、愛犬も同じことが起きます。健康状態が気になるときは、食事内容に偏りがないか、ストレスが続いている状況ではないか、一度見直してみてくださいね。

アレルギーは免疫反応の誤作動

本来は自分の体を守る機能が誤作動を起こすと無害なものに対しても免疫細胞が反応することがあります。その結果、自分の細胞や組織を傷つけます。これがアレルギーです。現代は犬のアレルギー関連の病気はとても多いです。例えば、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症もそうですね。

 

発症数が多くなったのは動物病院で診断される機会が増えたからともいえますが、空気中の花粉や化学物質が多くなり、免疫細胞が忙しくなってしまっている環境も原因のひとつですね。

 

免疫と腸の関係

私たちヒトも愛犬も体の中で免疫機能が特に備わっている場所は腸です。口から入った食べ物が消化され、体の中に吸収される場所。だから腸は防衛機能が強化されており、体の中の免疫細胞の7割が集中しているといわれています。

 

そのため、免疫力の維持のためには腸の健康を意識することが大事。腸が健康というのは、腸内細菌のバランスが整っているということです。近年は腸内環境についての研究が進んでいて、専門用語も新しいものが出てきました。

 

◆プロバイオティクス

健康に有益な影響を及ぼす生きた微生物(いわゆる善玉菌)のこと。乳酸菌(ビフィズス菌もその一種)など。

 

◆プレバイオティクス

善玉菌のエサとなる、難消化性植物成分。水溶性食物繊維やオリゴ糖などです。

 

◆シンプロバイオティクス

プロバイオティクスとプレバイオティクスを一緒の摂ると良いと言われており、この組み合わせのことをシンプロバイオティクスと呼びます。

 

◆バイオジェニックス

プロバイオティクスのように生きた菌だけでなく、死んだ菌も含めて乳酸菌そのものから生成される代謝産物や菌の成分自体が腸に直接働きかける成分のこと。

 

 

腸内環境を整えるための犬用サプリメントがたくさん販売されています。どれが良いのか迷うところですが、結局は愛犬の体質に合ったものが一番に良いものになります。まずは与えやすさを優先して試してみるのが良いでしょう。便の状態(硬さや匂い)がこれまでとしばらく与えてみた期間との違いを観察して判断しましょう。匂いが異常な臭さではなく、硬さや湿り気がバナナのような感じが健全な便といえます。

 

免疫力のために食事で出来ること

免疫と腸の関係が深いことから、健康の要は腸内環境が整っていることといえます。私たちができることは日々の食事の工夫。少しの工夫が腸から体全体への健康維持に役立ちます。

 

先述のプロバイオティクスとプレバイオティクスが一緒に摂れるように組み合わせることがおすすめです。

 

◆プロバイオティクスが豊富な食材

ヨーグルト、麹、納豆、あまざけなどの発酵食品です。ヨーグルトには〇〇菌配合と書かれていますので、どのタイプが愛犬に合うのかメモを取っておくと良いと思います。ただし、菌の種類だけでなく脂質の量なども便の状態に影響しますのであくまで参考程度です。あまざけは糖質が多いので常食には向きませんが健康な高齢期や病気の回復期などのエネルギー補給に役立ちます。

 

◆プレバイオティクスが豊富な食材

バナナ、リンゴなどの果物、キャベツ、ブロッコリー、アスパラガス、キノコ、オートミールなどの野菜・穀類や寒天などの海藻類といった繊維質が豊富なものや、はちみつも。水溶性繊維質やオリゴ糖が含まれる食品です。粉末状に加工された商品(野菜フレーク)にも繊維質は含まれていますのでぜひ日々のトッピングに使ってみてください。

 

レシピ例としては、ヨーグルトとバナナ、納豆と野菜という風に組み合わせて一緒に与えると良いでしょう。とはいえ、体に良いからといって大量に与えると下痢や肥満の原因になってしまうので注意してくださいね。

 

<組み合わせ例と小型犬(体重5kg)の目安量>

A:    B:    C:

 

A:ヨーグルト大さじ1と野菜フレーク小さじ1(写真左)

B:ヨーグルト大さじ1とバナナの輪切(3mm)2枚(写真中)

C:納豆(ひきわりタイプ)小さじ2/3とリンゴのすりおろし小さじ1(写真右)

※1日1回分の目安量です。朝、晩のいずれか与えやすいときでOKです。

はじめて与える素材の場合は、目安量よりも少ない量で出来れば朝に与えて様子をみましょう。

 

 

まとめ

今回は、愛犬の免疫について説明しました。ほんの少量のトッピングでも愛犬にとっては味や質感の変化があり嬉しいご褒美になります。

それが健康に役立つものなら、飼い主にとっても嬉しく続けやすいですね。

 

ほんの少しの工夫ですから愛犬の健康な毎日のために気軽に始めてみませんか。

 

 

【参考】イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科 編集 公益財団法人 動物臨床医学研究所

【参考】公益財団法人 腸内細菌学会ホームページ

 

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