【愛玩動物飼養管理士監修】残暑も油断は禁物!愛猫を熱中症から守る対策のポイント

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松尾 猛之(ねこライフ手帳製作委員会委員長/愛玩動物飼養管理士1級)

ペット用品メーカー勤務を経て、母子手帳からエンディングノートまで、愛猫との生活記録をオールインワンで記入できる「ねこライフ手帳ベーシック」を2019年に製作しました。手帳の販売を通して、飼い主である人間が愛猫の個性と向き合い、理想の暮らし方を自分で考えることの大切さをお伝えしています。

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ねこライフ手帳製作委員会の松尾です。今回もよろしくお願いいたします。

 

今年も暑い夏になっていますね。地域によっては35度を超える猛暑が連日続いており、少し外に出ているだけでも危険な暑さを実感します。また夜になっても気温が下がらない日も多く、寝ている間の熱中症にも注意しないといけません。

 

それでも日頃の行動を観察していると、愛猫自身も暑さをしのぐいろんな工夫を考えていることが分かります。多頭飼いのご家庭なら、猫によって過ごし方の好みが違うことに気づかれた方も多いでしょう。

 

暑い時期にストレスなく過ごせることは、長い目で見れば愛猫の健康管理にもつながる大切な配慮。飼い主の一方的な押し付けでなく、猫たちの工夫や好みを尊重しながら環境を整えてあげることも必要です。

 

「エアコンをつける、水を置く」だけでは足りないという気持ちで、残暑の時期も一緒に暮らす猫たちに寄り添った暑さ対策を行いましょう。

すでにしっかり心がけておられる皆さんもいま一度整理、確認してみてください。

「猫は暑さに強い生き物」という誤解は改めよう

「猫はもともと砂漠で暮らしていたから、暑さに強い」という説を見聞きされたことがあるでしょうか。

 

イエネコの祖先とされているリビアヤマネコは、砂漠地帯を主な生息地とする生き物。

砂漠といえば乾燥した地域であることから、猫は暑い中でも平気で過ごせる体質を持っているという考察があります。

 

しかし、これを鵜呑みにするのはいかがなものでしょうか。

日本の夏は高温多湿。つまり砂漠とは異なる気候です。

 

蒸し暑い上に空気が溜まりやすい屋内の環境は、人間と同じく猫にとっても辛いものとなります。

加えて夏の平均気温は年々上がっており、場所によっては猫の平熱とされる38~39度に達する、あるいは超える時代となってしまいました。

 

猫は肉球以外に汗をかける場所(汗腺)がほとんどありません。

体内に熱がこもる状況が続けば、猫にも熱中症のリスクが高くなることをしっかりと理解しておきましょう。

エアコンが嫌いな猫もいる・・・設定には気をつけて

猫と暮らす家庭に欠かせない暑さ対策はエアコンですが、冷房がしっかり効いていれば猫も機嫌良く過ごせる、とは限らない難しさもあります。

 

ただ部屋を冷やすだけでなく、エアコン設定の工夫も大事。

除湿のコントロールはもちろん、特に子猫がいるご家庭では風の強さや向きの配慮も必要です。

風を避けられる場所や身を隠せるタオルケットなどを用意しておけば、愛猫にとっては快適に過ごせる方法が増えるメリットにつながるでしょう。

 

よく「ウチの猫はエアコンが嫌いで・・・」という声を聞きますが、自然の風とは違う冷感が苦手だという個体は意外と少なくありません。この点は人間も同じですね。

 

このような場合は、エアコンだけに頼らない空調を考えることになります。

気温が下がる朝晩に部屋の換気を行ったり、空気がこもらないよう扇風機やサーキュレーターを使って循環させたりといった配慮が効果的です。

 

また稀にですが、押し入れの奥など暑そうな場所に自ら入っていく猫もいます。

冷え過ぎている部屋から一時的に逃れたいという意思なのか、単なる好みなのかは個体によって分かれるでしょう。それでも理解しておきたいのは、過ごしやすさの基準が人間と違う場合もあるということ。最初のうちはこまめな監視も必要ですが、よほど危険な場所でない限りは愛猫の居心地を尊重してあげて良いかと思います。

暑さをしのぐ「ゴロン」の方法は猫それぞれ

飼い主による配慮だけでなく、愛猫自身が行う暑さ対策もあります。

リビングのいろんな場所で「ゴロン」と手足を投げ出す、あるいはヘソ天で仰向けになる様子は暑い夏ならではの光景といえるでしょう。

 

フローリングや畳の上など「ゴロン」の場所も個体によってそれぞれ。一時の暑さしのぎで寝転がる場合もあれば、その場でしばし熟睡する猫もいますね。

愛猫がどんな場所を自分の好みと考えているかの問題ですので、飼い主はできる限り、日常の過ごし方をしっかり観察してあげたいところです。

 

今では人間が使うアイテムにも普及していますが、冷え過ぎることなく適度に体温を下げてくれる「接触冷感生地」を使ったマットも有効でしょう。

軽量である上に場所を選ばず使える便利さもメリットです。万能性が高い素材なので、熱帯夜でも快適に過ごせるよう寝床に敷くのも良いかと思います。

水を飲ませる工夫も必要・・・ペーストおやつの活用が効果的

暑い夏には室温管理と並行して、水分補給に対する工夫も考えたいところです。

熱中症予防には体温の上昇だけでなく、脱水にも気をつけないといけません。水を自発的に飲んでくれない場合、どうやったら飲んでくれるかを考えることも時には必要となります。

 

筆者宅で実践しているのは「ペーストおやつ」の活用。そのまま与えているご家庭も多いかと思いますが、飲水の目的を重視するなら水で薄めるのが効果的です。

 

20gほどの水にペーストおやつ(1/3本)を入れ、よくかき混ぜれば完成。愛猫たちには好評で残さず飲み干してくれています。ペーストは水に溶けにくく沈殿しやすいため、塊が残らないようスプーンやフォークでしっかりほぐしておくことがポイントです。

 

反応がイマイチならペーストおやつの量を増やしてもいいですが、私個人的にペーストおやつは「ここぞ」という時に与えるべき嗜好品だと思っているので・・・普通の水を飲まなくなってしまわないよう、なるべく薄めて出すのがベターです。

あなたが「外から帰ってきた時」に気をつけたいこと

最後に、筆者自身も気をつけていることを1つ書いておきます。

 

汗だくで暑い外から帰ってきた時、どうしても 「エアコンの設定を強くしたい」という欲求にかられてしまいます。

 

以前は設定温度を下げたり、風の勢いを強くしたりといったことをよくやっていました。

ただリモコンを操作した瞬間、一緒にいるウチの猫たちは揃って昼寝の場所を変えたり、カーテンの向こうに隠れたりとそれぞれの行動を取るのです。

 

詳しい心中は分かりませんが、私とは目も合わせず不服そうな感じにも見えて、今思えばおそらく「何してくれてんだ」という気持ちだったことでしょう。

 

冷静に考えれば、外に出ることがない猫たちが急に部屋を冷やされるのは、それまでの快適さを奪われるようなもの。「何してくれてんだ」となる気持ちもよく分かります。

心地良かった室温が人間の都合で変えられてしまうわけですから、ムッとされても仕方ありませんね。

 

要は我々人間が少しだけ我慢すればいいだけの話で・・・数分ほどで室温に慣れれば、愛猫の機嫌を損ねることもありません。

熱中症に気をつけるのはもちろんですが、24時間部屋の中にいる愛猫の気持ちを考えた心づかいも大事だと感じます。

 

 

暑さ対策は人間と猫の健康を守るために欠かせないものですが、お互いにとっての快適な環境を考えるきっかけにしたいテーマでもあります。

 

熱中症の予防は毎年必要となるわけですから、空調や飲水など日常的な部分を中心に、猫目線で考えながら少しでも効率の良い方法や手段を見つけていく努力は忘れないようにしたいものです。

 

飼い主としてのいろんな工夫や気配りを忘れることなく、もうしばらく続く残暑の毎日を愛猫と一緒に乗り切っていきましょう。