ペット用品メーカー勤務を経て、母子手帳からエンディングノートまで、愛猫との生活記録をオールインワンで記入できる「ねこライフ手帳ベーシック」を2019年に製作しました。手帳の販売を通して、飼い主である人間が愛猫の個性と向き合い、理想の暮らし方を自分で考えることの大切さをお伝えしています。
ねこライフ手帳製作委員会の松尾です。今回もよろしくお願いいたします。
私、現在は猫が中心の活動ではありますが、以前はペット業界で犬の飼い主からお話を聞く機会も数多くありました。
この経験をもとにした知見もご提供できればと思い、このコラムでは猫に限らず、犬との正しい暮らし方についてもご紹介させていただきます。
さっそく今回は、犬と暮らす皆さんに向けて、お散歩に欠かせない「リード」の話題です。
リードは犬と暮らすご家庭の必需品、そして愛犬の命を守る大切なつながりとなります。
安全を第一に考えた適切な管理や使い方、あなたはできていますでしょうか。
※リードの目的を知り、適性に合った1本を選びましょう。
かつては「綱」あるいは「手綱」と呼ばれていたリード。お散歩などで公共の場に出る時、愛犬の首輪やハーネス(胴輪)につないで、愛犬の歩行や動きをコントロールするための器具です。
犬は個体差が大きいため、犬種や体格に合わせる形で、さまざまな長さや太さのリードが作られています。
通常、商品のラベルには「小型犬用」「体重○キロまで」といった使用対象が明記されており、リードを買い求める際にはしっかり確認することが必要です。
適性にそぐわないリードの使用は、お散歩中の不便だけでなく事故などのトラブルにつながる恐れもあります。必ず愛犬の個体に合ったリードを選びましょう。
またリードには、ナイロン、布、革、金属など、いろんな素材があります。
素材によって持ちやすさ、操作性、耐久性、お手入れのしやすさなど、特性も異なりますから、愛犬と安全に、ストレスなくお散歩することを第一に考えて検討したいものです。
そしてもちろん、リードのカラーやデザインも多彩になっていますから、愛犬の首輪やウエアとのコーディネートもぜひ楽しみたいですね。
※劣化の判断が難しい「金具」いきなりの破損が命取りになることも。
お散歩をする愛犬の安全を守ってくれるリードですが、使い続けるうちに、その性能は確実に擦り減っていきます。
リードは年数が経てば確実に劣化が進み、壊れるリスクも少しずつ上がっていくもの。
使用する飼い主がしっかり認識しておくべき点だと、私は思います。
リードの消耗で特に気をつけていただきたいのは、接続部に使われる金具。
ナスカン、Dカンといった名称が用いられる部分です。
金具は愛犬の引っぱりによって、継続的に負荷が生じる箇所ですが、ほつれなどが見た目に分かる生地とは違い、異常の有無を判別しにくい難しさがあります。
厄介なのは多くの場合、少しずつひびが入るのではなく、いきなりパンと破断してしまう危険があることです。
公的機関で金具の強度試験を行っているメーカーも多いですが、当然ながら、永久の安全性を保証するものではありません。
使用頻度や負荷のかかり具合には、ご家庭や愛犬の個体によって差異があります。リードと首輪(ハーネス)、それぞれ別のメーカーを使っている方もおられるでしょう。
こうなると、正直言って「少なくとも○年は大丈夫」といった基準を明確にすることは、とても困難になります。
※お散歩前点検は飼い主の義務。予備のリードも必ずご用意を。
私がペット用品メーカーにいた頃も、リードやハーネスに関しては、金具に関する質問やお問い合わせが多くありました。
破損の確率そのものは低いかもしれませんが・・・見た目で劣化を判断しにくい、そして「何年使ったら交換」という目安も立てづらい。
となれば・・・飼い主にできることは1つ。お散歩前の入念な点検です。
出かける前、いつものリードに異常がないか、毎回きちんとチェックされているでしょうか。
リードは飼い主と愛犬をつなぐ「命綱」だということを、忘れてはいけません。
大げさな比喩かもしれませんが、登山家は使用するロープや金具に異常がないか、事前にしっかりと確認します。不備があれば命に関わりますから当然ですね。
でも、リードも根本は同じです。トラブルの発生は逸走や事故を呼び、公道であれば愛犬の命が奪われかねない事態にもなります。
面倒だとか、大丈夫だろうとか思わず、お散歩前のリード点検は、飼い主の責任としてしっかり行いましょう。
金具だけでなくリードの生地にも、破れやほころびがないかの目視は行うべきです。
そして、手ごたえや操作に少しでも違和感を覚えたら、予備のリードと交換しましょう。
・・・「予備のリードと交換」と書きましたが、リードは使用とともに疲弊していく消耗品です。いつも使う1本に加えてもう1本、必ず備えておいてください。
※飼い主の不注意と油断が招いた「事件」
外で愛犬とお散歩されている光景を見かけると、多くの方は愛犬の様子やリードの張り具合を見ながら歩かれています。
一方でぼんやりとリードを持って歩いている方が、愛犬の急な動きに驚かれる様子を目にすることもあります。
中にはリードを持つ反対の手にスマホ、そして視線はスマホの画面・・・という残念な方もいますね。愛犬を外に連れている時、飼い主は絶対に集中を切らしてはいけません。
リードをつないでいても、飼い主の不注意が原因で起きてしまうトラブルもあります。
2016年の元日、群馬県で行われた「ニューイヤー駅伝」での出来事でした。
沿道には、小型犬を連れて観戦する観客がいました。
トラブルが起きたのは、先頭集団のランナーが目の前を通っていった時。その様子に興奮した小型犬が、思わずコース上に飛び出してしまったのです。
この観客は愛犬をリードでつないでいましたが、ランナーに気を取られており、愛犬に注意が向いていませんでした。そのため愛犬の飛び出しに対応できず、リードから手を離れてしまったのが原因とされています。
結果、飛び出した犬を避けようとしたランナーが転倒するアクシデントに・・・この様子は生中継の映像でも流れました。
幸い、ランナーにも愛犬にもケガはなく、レースへの大きな支障もありませんでした。
しかしこの観客は、市の動物愛護条例における「係留義務違反」の疑いで書類送検されています。
愛犬への集中を切らし、うっかりリードから手を離してしまったことが、飼い主の過失、そして刑事事件となったケース。リードが「命綱」であることを、改めて思い知る出来事だったように感じます。
※リードが教えてくれる、愛犬への気づき。
お散歩用のリードは愛犬の安全を守る器具ですが、同時に愛犬の様子を確認するための大切なツールでもあります。
特にシニア期の年齢になれば、ただ歩かせるだけでなく、リードの手ごたえを感じながら歩き方を観察することは、飼い主による重要な日常ケアの1つといえます。
左右のよれや引っぱりの加減など、愛犬の歩様に関するちょっとした変化も、リードの手ごたえから得られる大切な情報です。
お散歩を通して愛犬の気づきを得るために、リードを活用する意義はとても大きいものとなります。
愛犬の命綱であり、コミュニケーションの道具にもなるリード。
毎日のお散歩を安全かつ楽しく行うために、愛犬と飼い主をつなぐリードの大切な役割を、皆さんもこれまでより意識を少し強く持って、使ってみてはいかがでしょうか。